警防

ノズルの基礎知識

こんにちは!消防マナブです!

前回はホースについて勉強しましたね。今回はホース延長のその先にある放水に必要なノズルの基礎知識について確認しましょう!

管鎗とノズルの違い

まずはごっちゃになりがちな管鎗とノズルの違いについて確認しましょう。

管鎗とはポンプからの水流をノズルまで整流しながら流速を増すための器具です。

逆にノズルは管鎗によって整流された水流を様々な形状に変化させより効果的な放水をするための資機材です。

現在はノズルと管鎗をが一体となっていることが多く、総称として「管鎗」と呼ぶことが多いですが、今回はノズルの部分にピックアップして紹介するので、「ノズル」に統一します。

ノズルの種類

スムースノズル

スムースノズル

スムースノズルは、管鎗から筒先口径までスムーズに絞っているストレート放水専用のノズル。ノズルの中で最も損失が少なく、最大放水射程を得ることができます。後述するヴァリアブルノズルのストレート放水と比較し、水が塊で飛ぶためソリッド放水とも呼ばれます。
一般的に使用されているノズルの口径は19㎜~29㎜程度となっています。

あまり現場で使用することがないと思いますが、強風下の火災では横風に負けずに放水できます。そのため、糸魚川の火災後、総務省消防庁からも強風下火災対策で積載するよう通知がでています。

最近はYONEさんからボアテックスノズルのような、ガンタイプノズルにスムースノズルが取り付けられているノズルもあります。

ヴァリアブルノズル

ヴァリアブルノズル

ストレート放水から噴霧放水(100度角)などに放水形状を変化(ヴァリアブル)することができるノズルです。放水形状は変えられますが、口径は変えられません。

放水形状は以下のように、ノズル内の中央にある円すい板に水流を当て、放水形状を変えるため、スムーズノズルよりもストレート放水は荒く、ガンタイプノズルよりも噴霧放水の粒子は荒くなります。

放水形状の変化方法

ダブコンノズル

スパコンノズル

ダブコンノズルは放水形状と口径を変えることができるノズルです。放水形状はストレートから噴霧へ、口径は10㎜、13㎜、15㎜、19㎜、23㎜の5段階に変更できます。

口径を変えられるため、現場の状況から筒先員が流量や飛距離を選択することができます。そのため、筒先員は流量や飛距離などの諸元を覚えておく必要があります。

スパコンノズルの放水量

商品としてはダブコンノズルにストップバルブを付けたスパコンノズルもあります。積載されているのはダブコンノズル+正管鎗ではなく、このスパコンノズルなのが多いのではないでしょうか。

ガンタイプノズル

ガンタイプノズルは管鎗に取手をつけて銃のような形をしたノズルのことを指します。広義ではスパコンノズルなどもガンタイプノズルに入りますが、今回はハンドル操作でのシャットオフ機能を有したものをガンタイプノズルとして定義します。

ガンタイプノズルにはユニークな特徴を持つノズルがあるので紹介します!

オートマチック・Gフォースノズル

オートマチック・Gフォース

オートマチック・Gフォースノズルはデュアルマチックノズルの進化系です。オートマチック・Gフォースノズルの冠名にもなっているオートマチック機能とは放水流量が変化してもノズル圧力を自動で一定になるよう調整し、飛距離を一定に保つことができる機能です。庭先で散水する際、飛距離が足りない場合、先端をつまむことで(口径を絞る)飛距離を伸ばしますよね。それを放水中に流量が少なくなった際に機能します。そのため、ノズル圧力を一定に保ちながら流量を確保することができ、流量が乏しい状況でも飛距離を確保することができます。

規定圧力は0.7MPa。流量は250~570ℓ/minに調整できます。

特徴として、ノズル圧力が低下した際でも流量をキープするための緊急モードがあります。

クアドラフォグノズル

クアドラフォグノズル

クアドラフォグノズルはノズルの先端にタービンティース(回転歯)がついており、水の粒子がよりきめ細やかな噴霧放水を可能にしたガンタイプノズルです。おそらく、最もポピュラーなガンタイプノズルではないでしょうか。

規定圧力は0.7MPa。流量は110・230・360・470ℓ/min(口径8・12・15・17mm)に切り替えられます。

タービンティースとは

ノズルの先端の歯(ティース)には固定歯と回転歯の2種類があります。

一般的にスパコンノズルやヴァリアブルノズルは固定歯、クアドラノズルや東京サイレン製ガンタイプノズルが回転歯になります。オートマチック・Gフォースノズルは固定歯か回転歯かはオプションで選べるようになっています。

回転歯の場合、噴霧放水の際、回転歯が回転することで水を粒子状に砕くため、放水の表面積を増加させることで吸熱効果を高めます。
しかし、噴霧放水の中が空洞になるため、放水死角をなくすためにノズルを回転させる必要があります。

タービンティース説明

また、この中抜け部分に向かって気流が発生するため、燃焼室内で回転歯を回すと加熱空気が自分に向かってくるため注意が必要です。

NM-V ガンタイプノズル

NM-Vガンタイプノズル

ここできました!個人的に推しているガンタイプノズルのNM-Vです!
ここまでYONE製のガンタイプノズルを紹介してきましたが、これは東京サイレン製のガンタイプノズルです。

規定圧が0.7MPaと0.5MPaの2種類あります。0.7MPaのものは無反動タイプになっているなど、後述するガンタイプノズルの弱点を補ってくれます。
流量は0.7MPaのものが115・230・350・475ℓ/min
   0.5MPaのものが125・240・345・450ℓ/minとなっています。

また、回転歯がついていますが、クアドラフォグノズルと異なり中抜けしないという特徴を持っています。
なぜ中抜けしないのかと、東京サイレンの営業の方に伺ったことがあるんですけど、その際は

営業「んーなんでなんでしょうね笑 爪の形がなんかいい感じだからですね。」

とおしゃってました笑

東京サイレンの公式YouTubeでは、爪の形状と放水口の口径が最適な組み合わせになっていると説明されてました。

ガンタイプノズルの弱点

回転歯がついていて吸熱効果の高さによる消火効率の良さ、筒先員の手元でコントロールできる定圧定流量など良いところが多いガンタイプノズルですが、弱点もあります。

それは、放水反動力が原因による延焼防止に向かない点です。

多くのガンタイプノズルの規定圧力は0.7MPaです。ここで初任科でも習った放水反動力の公式に当てはめてみましょう。

放水反動力 F=150dc²Pn
F=放水反動力、dc=ノズル口径(cm)、Pn=ノズル圧力(MPa)

一人での保持限界は160Nとなります。

では、クアドラフォグノズルで延焼防止に入る場合、470ℓ/minを打った場合の放水反動力は

150×1.7cm²×0.7=150×2.89×0.7=303.45N

となります。1人で長時間筒先を保持しようと思うとしんどいですよね泣

ではスパコンノズルだとどうでしょうか。流量が530ℓ/minを

150×2.3cm²×0.3MPa=150×5.29×0.3=238.5N

となります。クアドラよりは現実的に保持できそうな数字になってきましたね。

やはり、ガンタイプノズルは屋内進入向きで延焼防止には不向きですね。

これが高圧小口径の弱点です!

その点を考えると0.5MPaが規定圧であったり、規定圧が0.7MPaの場合は無反動タイプのオプションをとれるNM-Vはガンタイプノズルの弱点を克服したいいノズルだと思いませんか!?

じゃあ、クアドラはダメじゃんというわけではありません。流量を出した場合放水反動力がすごいことを理解し、延焼防止の筒先はスパコンノズルを選定したり、反動力を軽減する筒先の保持方法をとるなど工夫をすることが重要になります。

資機材がダメなんじゃないです。無知がダメなんです。

反動力を軽減する筒先の保持方法は後日紹介します。

まとめ

今回はノズルについて確認しました。ノズルは消火に必要な放水技術の根幹となるものになります。各ノズルの特徴を理解することで、最適な選択肢をとることができます。もっと勉強しましょう!

引用文献

消防活動教本-火災の基礎知識、消防隊の資機材、活動要領- イカロス出版株式会社

消防機械器具概論 一般財団法人全国消防協会

YONE株式会社 公式HP
ノズル・管そう|YONE株式会社 (yone-co.co.jp)