警防

基本的な消火戦術

こんにちは!消防マナブです!

皆さんも所属で消火戦術の話になると、ここ近年戦術が増えすぎて包囲戦術、一方向戦術、PPV戦術、トランディショナルアタック、ウォーターコブラ戦術やらなんやら、大量の戦術が出てきてよく分からなくなってしまいますよね笑

というわけで、今回は日本の伝統的かつ基本的な消火戦術である”防ぎょ戦術”について説明します!

防ぎょ戦術とは

”同じ火災は2度とない”というように、火災は現場によって多種多様ですね。燃焼物、時間帯、人員、天候、装備、水利など様々な要因によって活動は変わります。

その中でも、有効な活動を行うために先人たちより考えられたのが、”防ぎょ戦術”といいます。

防ぎょ戦術の態様

防ぎょ戦術はに分けられます。

攻勢防ぎょ

火災の鎮圧を目指す戦術で、火点への直接注水などで一挙に消火することを目標にしています。これは消防力が火勢よりも優勢な場合に選択できる戦術です。

守勢防ぎょ

火災の延焼を防止するための戦術です。俗にいう包囲戦術がこれにあたります。消防力が火勢に対し劣勢の場合に選択される戦術です。

最初は守勢防ぎょから始まり、火災の進行とともに消防力が火勢より優勢になれば攻勢防ぎょに移行していくのが、一般的な守勢防ぎょの火災戦闘の流れですね。

考え方はポートランド消防のオフェンシブアタックが攻勢防ぎょにあたり、ディフェンシブアタックが守勢防ぎょにあたるイメージですね。

防ぎょ戦術の種類

火災は多種多様と先述したとおり、燃焼の形態や戦術の目的によって活動が異なるため、防ぎょ戦術も様々な種類があるので、それを紹介します。

包囲戦術

これは名前のとおり、火元建物を筒先で包囲する戦術です。

火災は四囲方向に拡大しますよね。なので、筒先で4方向すべて囲ってしまおうというシンプルな戦術ですね。

現場では、現着時に屋内進入ができず(消防力劣勢状態)、延焼危険が高い場合などに選択される戦術です。

挟撃戦術

火災をはさみ打ちにする戦術になります。対面放水に注意しましょう。

現場だと最先着隊が初動で4線延ばして包囲戦術をとることができる小隊ってありますか?

ないですよね笑 そもそも消防車に3人しか乗らない所属もありますよね。その時点で4線は無理ですよね。
イメージとしては、初動で延焼危険が高いところに2線延ばそうよ。というのが、挟撃戦術の運用方法だと思います。ここから、後着隊の現着とともに挟撃戦術から包囲戦術に移行するのが現場での流れになると思います。

街区戦術(ブロック戦術)

市街地は街区(ブロック)で形成されています。その中で、火災は街区(ブロック)の角、面、内部から発生するので、それに対応した戦術があります。

ブロック角火災

ブロックの角にある建物の火災は2面が道路に接しているため、道路方向への延焼危険は低いですよね。なので、延焼危険の高い側面に対して筒先を配備します。

ブロック面火災

道路に面している建物火災は接していない3面に延焼危険がありますよね。なので、側面と背面の計3面に筒先を配備します。背面に延焼すると防ぎょが困難になるため、”背・側・側の原則”に則り、優先的に背面に筒先を配備します。

ブロック内火災

ブロックの中にある建物の火災は一番厄介ですね。道路に面していないため、4面全てに延焼危険があります。なので、包囲戦術を基本とします。

先着隊の場合、火炎の噴出状況、気候、風向を基に最も延焼危険が高い場所に筒先を配備し、後着隊が到着し次第、包囲戦術へと移行していきます。

重点戦術

火元建物周辺の社会的、文化的、経済的に重要な対象物がある場合、これを重点的に防ぎょする戦術になります。天変地異などの普通の戦術で対応不可能な場合に選択される戦術です。

例えば、関東大震災では避難場所で火災旋風が発生し、避難した人々が犠牲になる事案がありました。こういう場合では避難場所が重点対象物になりますよね。

普段の業務では選択することはありませんが、大災害時の超消防力劣勢時に選択されます。

集中戦術

各隊が集中して一挙に鎮圧する戦術です。危険物の屋外貯蔵タンクなど被害が大きすぎる場合に選択されます。

まとめ

今回は基本的な消火戦術である”防ぎょ戦術”について確認しました。

日本の消火戦術はここから始まり発展しました。基本を押さえることで現代の消火戦術を理解できます。これからも他の消火戦術について確認していきましょう。

引用文献

火災防ぎょ 一般財団法人全国消防協会

消火戦術ガイドブック 木下 慎次 イカロス出版株式会社

消火活動安全理論 ジャパン・タスクフォース イカロス出版株式会社